パンツの裾(シングル?ダブル?)

パンツの裾(シングル・ダブル)について解説します。
福岡天神オーダースーツ専門店テーラーグレイスです。

 

裾の仕上げについて

 

パンツの裾をシングルにするか、ダブルにするか、誰しも一度は迷ったことがあるのではないでしょうか。

パンツの裾を折り返さない仕上げ方を「シングル」、折り返す仕上げ方を「ダブル」と言います。
この呼び方は和製英語で、欧米ではシングル仕上げを「plain bottoms」、ダブル仕上げを「cuffed bottoms」または「turn up」と言います。

 

シングルは足元がすっきりとしてややフォーマルな印象なので、幅広いシーンでお使いいただけます。
折り返しがあるダブルは、シングル仕上げに比べてカジュアルな印象やスポーティーな印象になります。

 

一般的なパンツの裾というと、ダブルよりもシングルをイメージする方が多いかもしれません。
日本では、ダブル仕上げのカジュアルな印象から、ビジネススーツの裾はシングルが主流となっています。しかし、シングルでなければいけないという決まりがあるわけではなく、好みに応じてダブルにしても何ら問題はありません。
実際、欧米ではダブルにしているビジネスマンが多いものです。

 

もともとパンツの裾はシングルのみでした

ダブルの起源には諸説ありますが、19世紀末に英国貴族が雨や泥で汚れないように裾を折り曲げたことから生まれたとされています。

裾を折り曲げて汚れを防ぐことは屋外のみで必要になります。つまり、ダブルの裾は屋外で活動するカジュアルなシーンに適した仕様であり、シングルよりもスポーティでカジュアル度が高くなるのです。

 

ダブルの裾が生まれた起源からも推察できることですが、フォーマルスーツはシングルになっています。なお、タキシードや燕尾服などのパンツには側章が付いており、そのことがシングル仕様にせざるを得ない理由にもなっています。

※側章とは、パンツの両側面に付けられたシルクのテープのことです。
フォーマルスーツのスラックスにはこの側章が付けられているため、裾をきれいに折り返すことができません。こうした理由から、現在ではシングルがフォーマルでダブルがカジュアルというイメージが定着しています。

 

それぞれの特徴

シルエットがすっきりとしたシングルは、軽やかでスタイリッシュ。
一方、ダブルには重厚感があり、クラシックなイメージがあります。

 

パンツをシングルにするメリットは、脚が長く見えるということが挙げられます。また、あらゆるシーンで通用するシングルスーツとの相性が良く、合わせれば全体のシルエットがスマートにまとまるでしょう。日本のビジネスシーンでは多くの人がシングルにしているため、シングルを選んでおくのが無難だという風潮もあります。

また、正礼装に位置づけられるモーニングや燕尾服、タキシードなど、フォーマルなスタイルにはシングル仕様が適しています。ダークスーツをシングルにしておけば、結婚式などのフォーマルシーンでも着用できるでしょう。

 

一方、ダブル仕上げにはクラシカルな雰囲気を強調できるというメリットがあります。

スーツの原点とされるラウンジコートが誕生した当時の生地は、厚みと重さがあったため折り返すという発想自体がありませんでした。しかし、現代のスーツに使用される生地は、当時とは比べものにならないほど薄く繊細になっています。ダブルの折り返しをつけることによって、靴に負けない存在感を演出します。

最近では、フロントボタンが2列に並んだダブルスーツや、ベストを加えたスリーピーススーツなど、英国調のスタイルに人気がありますが、これらの英国調スタイルには重厚感のあるダブル仕上げが適しているでしょう。裾を折り返していることでくるぶしまわりのボリュームが増し、プレーントゥやストレートチップなどの格式が高い革靴に合わせると、全体の雰囲気はさらに統一されます。

 

ちなみに、シングルとダブル以外に「モーニングカット」という仕様もあります。
モーニングカットとは、裾の前方を短く、後方を長くする仕上げ方のことです。モーニングカットで仕上げれば、パンツの裾が靴の甲に乗ってたるむことがないので、美しいシルエットを保つことができます。
昼間の正礼装であるモーニングコートのコールパンツがこの仕様であることが呼び名の由来になっています。
シングルよりもフォーマル度の高い仕様ですが、ビジネススーツに採用される場合もあります。

 

今回はパンツの裾(シングル・ダブル)についての豆知識でした。

 

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