台場仕立て

台場仕立てについて解説します。
福岡天神オーダースーツ専門店テーラーグレイスです。

 

台場仕立てとは

 

台場仕立てとは、ジャケットの内側のポケットのまわリを表地と同じ生地で囲う仕立てのことを指します。
まだジャケットの裏地の耐久性に問題があるその昔、裏地の張り替え補修の際に、ポケットまで作り直さなくても良いように施された仕立ての工夫のひとつです。

コストがかってしまうため、既製服で台場仕立てがされているのは稀なことが多いです。
表からは見えない部分なのでこだわりのオプションになりますが、台場仕立てにはジャケットの耐久性を高めるというメリットがあります。生地を多く使用するので高級なスーツにはよく用いられています。

 

台場仕立ての発祥国であるイタリアでは広く普及していますが、一方でスーツの発祥国であるイギリスでは台場仕立ては一般的ではありません。

イタリアの気候やイタリア人の気質により、台場仕立てが生まれたと言われています。

 

イタリアではできる限りスーツを軽く、柔らかく作るという考え方が強いです。
比較的気候が温暖であるうえに、スーツを軽やかに仕上げることでファッション性を追求したいというイタリア人ならではの気質からです。このような理由から、柔らかい生地を開発したり、軽く薄い芯地(スーツ生地の内側に貼られている型崩れを防ぐためのもの)を使用したりするようになりました。
しかし、それでは耐久性が低いということで、強度を増すために台場仕立てが考えられたのです。

 

イタリアと違って冬がとても寒いイギリスでは、ファッション性よりも防寒性が優先されるため、分厚いスーツ生地や厚めの芯地が使用されます。そのため、あえて台場仕立てを採用する必要がないのです。

 

ちなみに「台場仕立て」という名称は、江戸末期の鎖国時、外国の艦隊から江戸を守るために人工的に築かれた海上砲台(台場)にその形が似ていることに由来しています。

 

台場仕立てのメリット

冒頭でもお伝えしましたが、台場仕立てを採用することによってジャケットの耐久性を高めることができます。

昔は裏地の強度が今よりも断然弱低く、着用を重ねるうちに表地よりも先に寿命が来るということがしばしばありました。そんな際には裏地をすべて取り替えていました。

裏地を取り替える際に内ポケットを解くという作業が大変難しく、ポケットを傷めてしまうことがあったため、解く必要のない台場仕立てが日本でも一般的となりました。

 

現在では、裏地の品質も格段に向上したため、ジャケットの型崩れ防止という効果のほかは、主に「装飾的デザイン、ひと手間かけた高級仕立ての代名詞」として、オーダースーツオプションの中でも人気の高い縫製仕様となっています。
また、こういった効果とは裏腹に、見返しから脇下までをスーツ表地と同じ生地を用いるために、若干ジャケットが重くなってしまうという一面もあります。

 

今回は台場仕立てについての豆知識でした。

 

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